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機械加工2022年5月20日

福祉車両の海外製油圧シリンダー修理

海外製油圧シリンダー 福祉車両リフト

以前にも農機具の油圧シリンダーの修理についての記事を公開させていただきましたが、

今回は色々な所に断られ当社にたどり着いた以前にもまして珍しい作業の依頼がありましたので、

ご紹介したいと思います。

 

福祉車両リフト

 

こちらは、福祉車両に取り付けられている、車いすを上下させるためのリフトになります。

省スペースであることとパワーや安全性を両立させるために、何本もの細身の油圧シリンダーが

使用されており、その動作によってリフトを上下させています。

 

国内の大手ディーラーでオプションとして取り付けることができるものだそうですが、

販売元のディーラーに問い合わせても修理の対応はしてもらえなかったとのことでした。

 

装置そのものの製造元はアメリカのメーカーであり、インターネットで調べればメーカーの

ホームページや部品の販売なども行われてはいるようですが、日本への部品の配送などの

サポートを行っているかどうかはわからず、当社へご相談いただく形となりました。

 

 

 

 

海外製油圧シリンダー修理

 

写真中央の、グネグネと曲がったスプリングが取り付けられている、

細長い部品が今回修理する必要のある油圧シリンダーです。

 

作動油の外部への油漏れが発生しており、車内を油で汚してしまっているとのことでした。

 

今回の依頼の最大の問題点は、装置がアメリカ製であるため、すべての部品の寸法がインチ規格に

なっており、国産の汎用部品では対応できないということでした。

 

例えば、油漏れの原因であると考えられるメッキロットの太さは二分の一インチ、

つまり12.7mmであるため、近しい寸法のミリ規格に変更してやる必要があります。

また、そもそものロットやシリンダーの太さも一般的な油圧シリンダーに比べてかなり細いため、

改造するにしてもやり方はかなり限定されてしまいます。

油圧シリンダーシリンダーチューブ

 

国産の装置とは設計の仕方そのものに違いがあるのか、悪戦苦闘しながらもなんとかシリンダーを

現車から取り外し、分解することができました。

 

予想通り、ロットには傷が入っていますし、シールも劣化しているため、部品交換などのなんらかの

対処が必要になります。

ロットの太さを一回り太くして14mmにすることができれば改造も多少はやりやすくなるのですが、

他の部品との兼ね合いで問題が発生するため、今回は12mmにすることにしました。

それに伴い、ヘッド、ピストン、クレビス、カラーなど、シリンダーチューブ本体を除く

関連部品をすべて作り直すことにしました。

 

作り直す部品の図面を起こしたら、旋盤での作業となります。

とはいえ、やはり部品の小ささがネックとなり、こちらも大変てこずっていたようですが、

何とかこちらの希望通りの製品を作り上げてくれました。

 

車椅子リフト修理

 

リフトを下からのぞき込んでいる写真になります。

 

わかりにくいかもしれませんが、写真の上部のあたりに今回修理した油圧シリンダーが

取り付けられています。

 

そもそもこのシリンダーは、リフトが上下している最中に車いすが落下しないように先端部分に

取り付けられている安全ゲートを動作させるための部品だったようです。

取付け部の調整も行い、リフトが地面に設置すると同時にゲートが安全に開くようになりました。

 

これまでに実績のないタイプの修理の依頼ではありましたが、

今回も無事に完成させることができ、お客様にも大変喜んでいただきました。

 

メーカーや種類を問わず、可能な限りご要望にお応えしたいと考えておりますので、

油圧シリンダーの修理に関することでしたら、まずは一度ご相談ください。