お問合せ011-881-2111

エンジン2022年7月14日

ホンダ・EAエンジン

まず初めに、こちらのエンジンをご覧になったことはありますでしょうか。

水冷の二気筒エンジンというと、バイクやジェットスキーなどに使用されているものを

思い浮かべることが多いですが、これでもれっきとした乗用車のエンジンです。

 

1970年代に生産されていた、ホンダの初代ライフのエンジンで、

エンジン型式名はEAと名付けられています。

 

現在の軽自動車のエンジンは排気量が660CCまでと定められていますが、

かつては360CCまでとなっていました。

シリンダーの内径は67mm、ストロークは50.6mmの、排気量356CCのエンジンです。

当社の社員の半分以上はまだ生まれてもいない時代の代物です。

 

お客様からの依頼は圧縮が無くなってエンジンが不調なので何とかしてほしい、とのことでした。

点検してみると、シリンダーは大きく摩耗しており、このままでの使用は困難な状態となっていました。

 

通常であれば一回り大きなサイズのピストンに交換し、それに合わせてボーリングして

ボア径を広げる、という修理方法になりますが、残念ながらエンジンが古すぎてオーバーサイズの

ピストンを手に入れるのは難しい状況となっております。

 

 

オーバーサイズのピストンがない場合や、オーバーサイズでは取り切れないほどの深い傷がある

場合などには、シリンダーをいったん大きく削ったうえでこちらのような鋳物のスリーブを入れる、

という修理方法をとる場合があります。

 

一か所のみに傷や摩耗があるので、そこだけを直したい、という場合にもよく使用されています。

当社にも多少は在庫もありますが、基本的には専門の部品商から仕入れる形で作業しますので、

少々お時間をいただくこととなります。

 

ただし、今回の場合、エンジンの構造上、シリンダーの周囲に冷却用のクーラントが循環している

ウォータージャケットが広範囲に見えております。

 

スリーブを入れた後、基本的にはブロックの面を平面研磨して仕上げるのですが、

このような構造のエンジンはいったん研磨して平らにしても、使用しているうちに徐々に

スリーブの周辺が周囲よりも下がってしまい、シリンダー内にクーラントが混入する、

という事象が発生するリスクがあるので、基本的にはお勧めしていません。

 

今回もお客様にその危険性をご説明した上で了解を得てからの作業となりました。

 

 

スリーブを入れ、さらに面を研磨した状態です。

 

シリンダーの寸法もスタンダードサイズに戻っていますし、そもそも加工する前から

ウォータージャケットの外側よりも下がってしまっていたシリンダーの周囲も、

研磨によって同一平面に仕上がっています。

 

 

今回の圧縮低下の主な原因はシリンダーでしたが、バルブやバルブシートも摩耗していたため、

 

こちらも研磨させていただきました。

 

これによってより一層確実な圧縮の回復が可能なはずです。

 

 

最後に、シリンダーヘッドの面研磨も行って、今回の作業は完了です。

 

こうした作業は、お客様に何らかの思い入れがあり、何とかしたいということで

ご相談をいただき最大限の努力をさせていただきました。

今回はお客様にお喜び頂き大変嬉しく思います。

 

古いエンジンの修理は部品が手に入らない事や亀裂などの損傷がひどい場合など多く見られます。

また構造が特殊であり機械に乗せられず加工できない場合もありますので

事前に一度ご相談ください。