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エンジン2023年2月1日

エンジン故障の診断(コンロッドの焼き付き)

当社ではいわゆる内燃機加工という、エンジンの部品の修理を行っていますが、

自動車工場にはエンジンルームを併設しており、エンジンの分解修理も行っております。

 

エンジンのトラブルにもさまざまな種類があり、それに応じた修理が必要になるわけですが、

その前段階として重要なのが診断と見積もりです。

 

エンジンの修理は多くの場合非常に高額な費用が掛かります。

 

分解、清掃、組付けの工賃はもちろん、部品代もありますし、修理のための加工賃も必要となります。

そのため、お客様からはたいてい、まずは見積もりが欲しい、という要望が寄せられます。

あまり高額になるようならばそもそも車を廃車にする、という場合もあるでしょうし、

中古のエンジンを買って載せ替えたほうが安上がりな場合もあります。

 

また、そもそも修理が不可能な場合や、部品が手に入らないということもよくあります。

 

そのため、お客様からの情報をもとに、どこにどういった問題があり、

具体的にどのような修理を行う必要があるか、という判断を的確にすることが求められるわけです。

 

今回はそう言った事例の中から一つ、紹介させていただきます。

 

これは、とあるエンジンのピストンの写真です。

エンジンから異音がするため、シリンダーヘッドをおろして内部を点検したところ、

ピストンのうちの一本がこのような状態となっていました。

 

中心にある穴や左上の切り欠きはもともとの構造なので問題ないのですが、

中心の穴の右側にうっすらと丸い跡がついているのがわかるでしょうか。

この写真では見えずらいですが、実は穴の左側にも一回り小さい、同じような跡がついています。

 

そして、下の写真が他の問題のない箇所のピストンです。

 

分解の際に生じたごみなどが載ってしまっていますが、先ほどのような丸い跡は

見られないかと思います。では、これは何かというと。

 

 

こちらは先ほどのピストンに重なるような形でとりついていた、シリンダーヘッドの写真です。

バルブに白い異物が付着しているのが見えると思いますが、先ほどの痕跡はこのバルブが

ピストンにぶつかることによってできたものだったわけです。

 

本来、バルブの開閉とピストンの上下はしっかりとギアやベルト、チェーンなどによって制御され、

きわどいながらも決してぶつかることのないように設計されています。

 

ただ、例えばタイミングベルトの交換をせずにいてベルトが切れてしまった時などにその機構が崩れ、

バルブとピストンがぶつかってしまうことがあります。

 

その場合にはたいてい複数の箇所で同時に衝突が発生しますし、そもそもこのエンジンは

シリンダーブロック側にカムシャフトがあるOHVのため、そのようなトラブルは基本的にありません。

 

また、何らかの理由でバルブを固定しているスプリングが外れたり、バルブが折れたり

というような原因によってバルブがピストンにぶつかることもありますが、

今回はそう言った兆候はありませんし、もしそうだったとしたらシリンダー内やシリンダーヘッドの

側にもっと大きなダメージが発生しています。

 

 

では何が起きていたのか。

 

 

エンジンの整備を行っている担当者に相談すると、すぐに先ほどのバルブのあたっていた跡の

あるピストンを軽く手で動かしてみて、クランクシャフトの子メタルが駄目になっている、

という診断結果でした。

 

確かに、他のピストンは手で動かそうとしてもびくともしませんが、問題のある部分だけは

何ミリか手で上下させることができてしまいます。

 

 

 

答え合わせとしてオイルパンを外し、問題のある部分のピストンを抜き取ってみた結果がこちらです。

上下に二枚入っているはずのメタルが重なり合って一枚にくっついてしまっています。

もちろん、コンロッドの内面もボロボロです。

 

 

クランクの側も確認してみましたが、こちらも傷だらけになっています。

 

オイル管理を適切に行っていなかったなどの原因で焼き付きを起こし、

このような状態になったのではないかと思われます。

 

そして、ピストンにバルブがぶつかっていた原因は、子メタルが焼き付きを起こすことによって

がたつきを起こし、ピストンが本来であれば上がらない位置まで上昇して、バルブに当たって

しまった、というものでした。

 

幸い、今回のクランクは再生可能な範囲でのダメージだったため、修理する方向でのお客様への

提案となりました。

 

今回は結果的に問題の発生している部分まで分解しての確認となりましたが、

診断そのものはもっと早い段階で行うことができました。

 

エンジンのトラブルは多岐にわたるため、常に正確な診断を行うというのは極めて難しいのですが、

当社においては長年にわたって積み上げてきた経験を継承し続けることによって、できるだけ早く

正解に近づけるようにしております。