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機械加工2023年3月2日

フォークリフトのリアアクスルの修理

【2021年8月】のブログ記事で、トラックなどの大型車に使われている

フロントアクスルの修理についてご紹介させていただいたことがあります。

 

そもそも『アクスル』という単語は日本語に直すと『車軸』という意味なのですが、

トラックや乗用車などの車両は前輪で方向転換するため、『フロント』のアクスルに

タイヤの向きを変えるための機構がついています。

 

では、同じように車輪で走行するフォークリフトはというと、ご存じの方も多いと思いますが、

ハンドルを切ると後輪が方向転換する仕組みになっています。

 

このため、同じような修理を行う際に対象となるのは、車体の後方にある『リア』アクスルとなります。

 

 

これは弊社で構内用に使用しているフォークリフトですが、後輪が車体に対して大きく

方向転換しているのがわかるかと思います。

 

前方のフォークで重量物を運ぶという仕様上、方向転換は後輪で行う仕組みになっている

のではないかと思います。

 

また、高速走行ではなく、むしろ小回りが利くことが重要となるため、乗用車などに比べて

タイヤの回転範囲も非常に広くなっています。

 

 

先ほどのリフトの拡大写真ですが、この中央に見えているのがフォークリフトの

リアアクスルになります。

 

車体にとりついている状態では全容がわかりにくいですから、分解された状態で入庫したものは

こちらです。

 

 

こちらは弊社のリフトよりも大型のもので、立ててあるために向きは変わっていますが、

基本的に先ほどの弊社のリフトと同じような構造となっています。

 

トラックのフロントアクスルの修理の際にも、基本的にはタイヤの向きを変えるときの支点となる

キングピンの穴の摩耗を修正していましたが、フォークリフトの場合にもやはりキングピン周りの

トラブルでの入庫が多くあります。

 

今回も写真右手の二つ連なった穴が摩耗して変形してしまっているのがわかるかと思います。

ここには、支点となるキングピンをスムーズに回転させるための

ニードルベアリングが使われています。

 

こちらがニードルベアリングです。

ニードルという名の通り、針のような細長いころが連なって回転することにより、

軸をスムーズに回すことができる構造になっています。

 

一般的なボールベアリングに比べて隙間が狭い環境でも使用できるのがメリットですが、

耐久性が低く、また挿入される部位により高い精度が求められるというデメリットがあります。

 

フォークリフトのリアアクスルには、スペースの都合上、

このニードルベアリングが使われている場合が多いのですが、負荷のかかる重作業の

多い環境で使用している場合、破損してしまう場合が多いようです。

 

また、高速走行するような車種ではないため、破損したままでも危険が少ないと判断されて、

修理せずに放置した結果、重症になってから入庫してくることが多いようです。

 

 

こちらはタイヤが取り付くナックル側の写真です。

本来はスラストベアリングが入ることによってスムーズに動いていたはずのものが、

ベアリングが破損したままで無理やり使い続けていたため、上部が大きく削れています。

 

リアアクスル本体にしろ、ナックルにしろ、修理の手順そのものはどちらも同じで、

溶接で肉盛りをしたうえで機械仕上げによって原型に戻す、という手順になります。

 

 

まずはリアアクスル本体の穴を溶接によって肉盛りします。

穴の直径が小さい場合には完全に穴をふさぐような形で肉盛りしますが、

今回は多少穴を残すことができました。

 

これによって機械加工の際の手間が結構変わってきます。

次の作業者への思いやりですね。

 

続いて、横中ぐり盤で穴を仕上げていきます。

まずはドリルでおおよその寸法まで削った後、バーに取り付けたバイトで寸法まで削っていきます。

先ほども書いた通り、ニードルベアリングは精度が必要となるため、何度も寸法の確認を

行いながらの慎重な作業となります。

 

 

仕上がった後の様子はこちらです。

上下の面も、平らに仕上げて修正してあります。

 

ナックルに関しても同様ですが、今回は上下の摩耗のみで穴そのものは無事だったため、

比較的簡単な作業となりましたので写真は割愛します。

 

 

最後にニードルベアリング、スラストベアリング、ピンシール、シム、そしてキングピンなどを組付け、

スムーズに動くことを確認して作業は終了となります。

 

今回のユーザー様も、不具合が出ていることはわかっていたものの、業務の都合上修理が

伸ばし伸ばしになっており、結局のところ重症化してしまってからの入庫、

ということになってしまったそうです。

 

様々な事情はあるかとは思いますが、車両や機械に不具合が出たら、

可能な限り早めの点検と修理をお勧めいたします。