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機械加工2023年4月19日

油圧シリンダーの削り飛ばし

油圧シリンダーに関する記事は何回か書かせていただきましたが、分解修理を行うにあたって、

最も難関となる可能性がある作業が、ヘッドの取り外しです。

 

 

 

こちらは農業機械で使われている一般的な油圧シリンダーの分解した部品ですが、

上にある黒い筒状の物の左手に置いてあるのが、ヘッドです。

 

様々な形状があるものの、中型の油圧シリンダーに多いのが、このように筒状のチューブに

ねじ込まれるような形で取り付けられているものです。

油圧シリンダーの分解の手順としては、まず初めにこのヘッドを取り外してはじめて、

他の作業が可能になるというのが一般的です。

 

今回の油圧シリンダーは比較的状態が良く、錆なども少なかったため、かなり容易に

取り外しが行えましたが、時としてこれが一大作業となることがあります。

 

 

作業前の写真は撮り損ねたので、こちらは作業終了後の完成写真となります。

右手の方に周囲に切り欠きのある丸い部分が見えると思いますが、これが

このシリンダーのヘッドの一部となります。

 

お客様も自力で分解修理しようとしたものの、ヘッドを回すことができず、

弊社への入庫となりました。

ヘッドの回し方としては、本来は専用治具などもあるのでしょうが、弊社ではパイプレンチを使用して

回す場合が一般的です。

 

最初に紹介した写真の油圧シリンダーも、パイプレンチでの取り外しを行いました。

さて、今回の作業に置いてですが、もちろんパイプレンチでの作業は試みましたが、

これはもはやダメもとでやってみたというだけで、当然、回すことができませんでした。

お客様の方でも同じ作業は試みられているようですから、当然の話です。

 

治具

 

次にチャレンジしたのが、治具を溶接して回すという作業です。

こちらの写真に積みあがっているのは、基本的にすべてシリンダーヘッド取り外し用の治具です。

ヘッドに溶接などの方法で固定したのち、大ハンマーなどで衝撃を与えてやることによって

回そうというものです。

 

様々な大きさと形状の治具があるのは、

長年にわたって様々な油圧シリンダーと格闘してきた結果ですね。

パイプレンチでは回らないものでも、溶接すればだいたい何とかなるのですが、

残念ながら今回はそれでもびくともしませんでした。

こうなると、最後の手段となります。

 

 

何やら無惨な光景になっていますが、これは旋盤でヘッドを削って壊すことによって

無理やり取り外した結果です。

 

もちろん壊したヘッドは使用不可能ですので、部品交換するか、新たに製作することとなります。

手間も時間もかかりますし、もちろん費用も高額となりますが、他に手段がなければやむをえません。

 

 

この薄っぺらの残骸がシリンダーのチューブにあたっていたヘッドの一部です。

今回のヘッドが回らなかった原因は、この隙間に錆が溜まっていて、固着していたためでした。

たかが錆ではあるのですが、もはや一体化しているのではないかというほどに強力にくっついて

しまうことがあります。

 

油圧シリンダーの形状によってこの作業が不可能な場合もありますので、

あくまでケースバイケースにはなりますが、最後の手段としてお考えいただければと思います。