機械加工2021年8月11日
フロントアクスルのキングピン穴修正
キングピン穴修正 フロントアクスル
トラックなどにおいて、ハンドル操作の際にがたつきがあったり、ブレがあったりする場合、フロントアクスルのキングピン周辺に問題がある場合があります。
ハンドルの動きに合わせて前輪を動かす際、その軸となるのがキングピンですが、長距離を過酷な環境で走っている場合が多いトラックなどにおいて、キングピンやその周辺の部品の摩耗によるトラブルはつきものです。
こうした場合には通常、メーカーで販売されているキングピンキットを用いて部品交換を行い、修理を行いますが、時に摩耗が大きく、キングピンキットだけでは修理しきれない場合があります。
特に、フロントアクスル側のキングピン穴が摩耗していたり、タイヤが取り付くナックルの側の当たり面が摩耗していたりする場合、キングピンキットでの修理はできません。
こうした場合、当社では修正用スリーブを用いたキングピン穴の修理やナックルの当たり面の溶接肉盛による修正での対応が可能です。
今回修理依頼のあったフロントアクスルです。
写真の右手にある運転席側の摩耗が大きく、フロントアクスルとナックルとの当たり面が共に大きく
えぐれるように削れていました。
予め溶接による肉盛を行い、続いて機械加工で修正用スリーブを入れます。
フロントアクスル本体をいったん大きく削って真円にしたのち、本来の寸法に戻すための
修正用スリーブを圧入します。
また、フロントアクスルを削る際に先ほど溶接による肉盛をしてあった当たり面も切削し、
正規の寸法に戻します。
ちなみに、修正後のキングピン穴の中間に黒く見えているのは、組付けの際、キングピンを
固定するためのノックピンを入れられるように、修正用スリーブにあらかじめ
カットをしてあるためです。
ナックルの側も同じように溶接による肉盛を行い、機械加工によって本来の寸法へ修正してあります。
肉盛の際にナックルのブッシュ穴が熱によって変形しますが、
こちらも機械加工で修正済みです。
ここまでくれば、あとは通常のキングピンキットでの組付け作業となります。
ベテラン技術者が経験に基づいた手作業による組付けを行います。
今回の場合はキングピンキットにナックルのがたつきを調整するためのシム板が複数入っており、
その中から適切なものを選択しましたが、メーカーによってはシム板が一枚しか入っておらず、
調整のために新たにシム板を製作する場合もあります。
組付けが完了し、作業は完了です。
このフロントアクスルが取り付けられたトラックは、ハンドル操作にがたつきのない、
安全な運転が可能になる事と思います。