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機械加工2022年1月14日

大型トラクターのホイール改造加工

当社は北海道で営業させて頂いているという土地柄、

様々な農業用機械の加工や修理を行っております。

北海道ではその広大な面積を生かして大規模な農業を営んでいる農家さんが多く、

使われているトラクターなども本州などで一般的に使われている国産の機械ではなく、

アメリカやヨーロッパなどの海外製の大型の機械を使用されている場合が多くあります。

こうした機械は一つ一つの部品も大型である場合が多く、部品の供給に時間がかかったり、

寸法規格も国産の部品メーカーとは異なるため、実際に作業するにあたって様々な苦労をする場合が

あります。

先日お客様から依頼された作業も、

まさにこうした事情を反映した内容でしたので、紹介させていただきます。

 

アメリカに本社のある世界最大の農業機械メーカー、ディア・アンド・カンパニーのブランドである

ジョンディアは、国内ではヤンマーアグリジャパンで輸入販売を行っていますが、

アメリカの広大な大地での大規模農園での使用を想定されているためか、

非常に大型の機械が多いようです。

 

こちらはそのジョンディアのトラクターのタイヤのホイールですが、

乗用車はもちろん、大型トラックなどのホイールと比較しても、

非常に大きなものを使用しているようです。

寸法としては、直径でおよそ900mm、幅は1200mmほどもあります。

 

ホイールを上からのぞき込んでみると、ホイールを取り付けるボルト穴の開いたフランジが、

ホイールのほぼ中間付近にあるのが見えます。

 

今回のお客様からのご依頼は、このタイヤを今まで使っていたのとは別の機械で使用するため、

このフランジの位置をもっと手前側に移設したい、とのことでした。

 

写真で見てわかるとおり、フランジはホイール本体に溶接で取り付けられているため、

このまま移設することはできませんので、現在のフランジを取り除いたうえで、

新たに作り直したフランジを溶接しなおすことになります。

 

 

高速で走る乗用車などと違ってトラクターのタイヤの回転速度は遅いため、

極端に高い精度は求められませんが、やはり新しく取り付けるフランジも

ホイールの外周に対して正確に中心に取り付ける必要があります。

 

そのため、まずは当社で最も外径の大きな工作物を加工可能な正面盤を使用し、

フランジを正確に中心に取り付けるための段差を作りました。

 

ホイール本体も多少は削っていますが、全体が変形しない程度に何点か溶接で少しだけ肉盛りを行い、

それを利用して段差を作っています。

 

もともと取り付けられていたフランジは、アセチレンガスで切断して取り除きます。

これ自体はもう使いませんが、作業上、後で必要になるため、ある程度きれいに形を残してあります。

 

 

もともとのフランジを取り除いたホイールの写真です。

上の方に見えるのが、新しいホイールを取り付けるための段差となります。

こうして見ると、ここまでの作業でかかった熱による変形も多少はあるにしろ、

真円に見えていたホイールの内部は、結構いびつに変形していたようです。

まあ、本来この部分に何かが正確にはまり込むわけではないので、

特にそんな精度は必要ないのでしょうが。

 

 

古いフランジを取り外した後の残っている部分は、まずはガウジングで大まかに除去していきます。

フランジの取り外しにしろ、残った溶接の除去にしろ、

本来であれば旋盤で切削したほうがきれいで簡単に作業が可能なのですが、

最初の方の写真で見てもらった通り、今回のホイールでは取付け部が非常に奥まっていて

旋盤の刃物が届きませんし、ホイール自体もその直径の割には肉薄なので刃物での切削では

ビビリが発生してしまうため、地道な手作業での工程となります。

さらに最後の仕上げとしては、防塵マスクと保護メガネで完全防備の上、

ディスクグラインダーを使用して砥石できれいにしていきます。

ある意味、今回の仕事の全作業工程の中で、最も過酷で時間もかかり、そして地道な作業でした。

 

 

さて、ホイール本体の加工とは別工程で、新たなフランジの製作も行われております。

まずは旋盤で材料からフランジの形状を削り出します。

新しい取付け位置の内径に合わせてあるため、もともとのフランジよりも一回り大きく仕上げています。

 

 

続いて、ラジアルボール盤を使用して、新しいフランジにボルト穴を開けていきます。

この際に以前の工程で残しておいた古いフランジを重ねてガイドにすることによって、

以前と変わらぬ位置に正確な穴あけを行っていきます。

 

 

完成したフランジは、ホイールの新たな取付け位置にぴったりと収まりました。

ホイールの反対側にはエアを入れるためのバルブがあるのですが、

念のためボルト穴との位置関係を合わせて、ずれないように治具で固定します。

 

 

作業の締めくくりとして、半自動溶接機による溶接を行います。

直径が大きいうえに全周溶接となるため、何度かホイールを転がして向きを変えながらの作業となります。

表側の作業終了後、ホイールの中に潜り込むような形で裏側からの溶接も行います。

 

 

これで当社での作業は終了です。

ホイール本体の塗装や取り外したタイヤの組付けなどを他社で行った上で、

ようやく機械への取り付けが可能になります。

 

 

裏側から見てみると、フランジがかなり奥に移動しているのがわかります。

伏せて置いたら大人一人くらい余裕で隠れられそうなスペースがありますね。

 

このような改造はもちろん、摩耗したり変形したりしてしまったタイヤフランジの製作交換なども

行っておりますので、お困りの際にはぜひご相談ください。