機械加工2022年9月6日
Vロッドのブッシュ交換
大型トラックなどで、車軸などの足回りの装置を固定するための部品として、
Vロッドというものが使用されている場合があります。
写真を見ていただければ名前の由来は想像がつくのではないかと思いますが、
文字通りアルファベットのVのような形状をしています。
こちらはとある国産メーカーのトレーラヘッドの後部の写真ですが、
フレームと車軸を固定するために使われています。
Vの字型に並んだ三点にはそれぞれ外側にゴム、内側に鉄の入ったブッシュが取り付けられており、
そのゴムの弾力によって地面からの振動や車体の揺れなどを吸収する仕組みとなっています。
同様の役割をする部品として、トルクロッドというものもよく使用されています。
トルクロッドの場合は直線に並んだ二か所にブッシュが入っているという構造ですが、
トルクロッドのブッシュはたいてい本体に圧入されているだけのため、ある程度の大きさの
油圧プレスと適切な治具さえあれば比較的簡単に交換が可能です。
実際、ディーラーをはじめ、多くの大型整備工場では、それぞれが工場内の作業の一環として
トルクロッドブッシュの交換を行っているかと思います。
こちらはVロッドのブッシュが入っている部分のアップと、新品の交換部品です。
トルクロッドとVロッドの構造の違いは、Vの字型に並んでいるという変則的な形ももちろんですが、
基本的にブッシュが抜けないようにスナップリングで固定されているということも挙げられます。
これは推測ですが、複雑な形状ゆえに負担も不規則にかかるため、単純な圧入では抜け落ちてしまう
恐れがある、というのが理由だと思われます。
しかも、このブッシュはしっかり固定されて動いたりしないように、
相当な圧力をかけて押しつぶしたうえで、そのまま抜けないようにスナップリングで抑え込む、
という挿入方法となっています。
このため、実際の入替の際には、適切な治具はもちろん、強力な油圧プレスと適切な圧力管理、
Vロッド本体の清掃や点検など、なかなか手間のかかる作業となります。
まずは古いブッシュの抜取りです。
ブッシュのゴムが膨れ上がっているため、抜き取る際にもプレスで押し付けながら、
スナップリングを抜き取ります。
スナップリング自体もさび付いて固着していたり、プライヤーをかけるための穴が
無くなっていたりするため、ある程度慣れが必要となります。
スナップリングが抜ければブッシュも抜けるのですが、ほぼ確実にさび付いて
本体に固着しているため、大ハンマーで叩いて抜いてやる必要があります。
ブッシュが抜けた穴ですが、内部には古いゴムがべったり張り付いているうえに、
スナップリングの溝には錆が溜まってしまっています。
このままの状態で新しいブッシュを入れようとしてもブッシュが収まりきらないことが
あるばかりか、スナップリングが「しっかりと溝にはまらず、
走行中に抜けてきてしまう恐れもあります。
入れ替えの工程と同じくらい重要で、かつ手間のかかるのが、
ブッシュの入る部分の清掃及び点検です。
スナップリング溝や奥の段付き部などが摩耗しているものは修理不可能なため、
お客様へお返しします。
問題がないものは丁寧に錆を落とし、ブッシュとスナップリングがきちんと収まるか確認を行います。
清掃が完了したら、新しいブッシュを入れる作業です。
ブッシュの向きを合わせ、治具を使って圧力をかけながらスナップリングを入れます。
メーカーによって具体的な数値は様々ですが、かなりの高圧まで押し込む必要があります。
圧力が不十分だとスナップリングがきちんと収まりません。
しかし、ここからあと少し圧力を上げると、今度はVロッド本体が荷重に耐えきれず割れてしまいます。
ブッシュの収まり方を見ながら、慎重に作業を行う必要があります。
入替終了後は、スナップリングの穴の間の距離を測定します。
この数値が規定値に達していなければ、スナップリングが適切に収まっておらず、
最悪の場合走行中にブッシュが抜けてきてしまいます。
こうした場合は清掃、もしくはブッシュを入れる際の圧力に問題があるため、
再度作業を行います。
三か所すべて入替が完了しました。
見た目以上に手間がかかり、かつ注意しなければならないポイントが多い作業となります。
実際当社では札幌市内の整備工場だけではなく、全道各地のディーラー様からも依頼を受けて
作業を行っていますが、それだけ通常の整備工場での入れ替えは困難なのだろうと思われます。
当社ではVロッドに限らず、スタビライザーやトルクロッドなど、足回り部品の各種ブッシュの入替
を行っております。
様々な形状に合わせた治具も用意していますし、必要に応じて新しく治具を製作して
対応する場合もあります。
外車や特殊車両など、対応しかねる場合もありますが、お困りの際にはまず一度、ご相談ください。