機械加工2023年6月17日
PTOシャフトの製作
ダンプやリアゲート、カーゴクレーンなど、様々な動きの装置を取り付けている
トラックが数多くあります。
これらの装置は油圧の力によって動かしている場合が大半なのですが、
その際に活躍するのが「PTO」です。
PTOという言葉は英語の「Power Take Off(パワーテイクオフ)」つまり、「動力を取り出す」と
いう意味の英語の頭文字からつけられている名前です。
文字通りエンジンの回転する動力を取り出して油圧ポンプを回転させ、この油圧の力を
利用して装置を動かす、というのが基本的な仕組みです。
そして、エンジンの回転は多くの場合、トランスミッション経由で外に出力されるのですが、
この回転を油圧ポンプまで伝えるために使用されるのが、PTOシャフトです。
これは4トンダンプの腹下の写真ですが、フレームの下で左右に伸びているのが、PTOシャフトです。
この写真では左手側がエンジンで、右手のフレームの陰に油圧ポンプが設置されています。
走行中に使用するものではありませんが、足回り周辺にあるうえ、油圧装置作動時には
フルで回転するものですし、回転元と回転先が必ずしも一直線上に無いものを
左右のユニバーサルジョイントによって伝達しているため、劣化して交換が必要になる場合が
多くあります。
交換部品は装置のメーカーで販売してはいるのですが、一つ問題となるのが、すぐに交換可能な
完成した状態では手に入りにくい、ということです。
そもそもダンプやカーゴクレーンなどの装置は、特定の車種に限定される形で
製造されているわけではなく、国内の一般的なトラックであればある程度どの車種にでも
取り付けられるように作られています。
この際に一つ問題となるのは、車種ごとに構造が異なるため、エンジンの回転の取り出し口や
油圧ポンプを取り付けられる位置が、その車種によってばらばらである、ということです。
このため、装置メーカーでは、PTOシャフトの交換部品を販売する際、出来上がった部品
ではなく、左右の部品と、それをつなぐためのパイプを支給し、車種に応じて自由にパイプを
切って長さを調節した上で、左右の部品を溶接して製作できるようにしています。
この写真の下に写っているのが古いPTOシャフトで、上に写っているのが左右の部品、
そして真ん中の袋に入っているのがパイプになります。
車種に合わせた大量のシャフトを在庫しておく必要がないため、とても合理的なシステムでは
あるのですが、やはり長さを正確に合わせたり、芯ずれの無いよう、そして途中で取れたり
しないようにしっかりと溶接する、というのは、必ずしもどの整備工場でも得意なわけでは
ありません。このため、当社の出番となります。
パイプの長さを現物に合わせてカットし、差し込んで溶接するだけで大丈夫、
というのが謳い文句ではあるのですが、やはり、それでは若干の芯ずれなども発生してしまいます。
そのため、当社では、旋盤に咥えた上でダイアルゲージによる芯出しを行い、精度の高い部品を
製作しています。
ユニバーサルジョイントもスプラインも溶接されてはいますが、これはまだ仮付けの段階です。
芯出しと仮付けの終了後、ジャーナルマスターを利用してきれいで丈夫な溶接を行います。
続いて、塗装も行えば、作業そのものは完了です。
古い部品とそっくり同じ状態で、新品のPTOシャフトが出来上がりました。
もちろん、溶接機さえあればどこの整備工場でも最低限可能な作業ではあるのですが、
手間や精度、設備の準備などを考えると、当社へご依頼いただいたほうが確実な作業が
可能ではないかと思います。
また、PTOシャフトは交換部品が急ぎで必要となる場合が多くあると思いますが、
非常にスピーディーに作業は完了しますので、
それほど長い時間お待たせすることもないと思います。
是非とも利用していただければと思います。