エンジン2023年9月16日
シートリング製作入れ加工
皆さんは「陸王」という名前のオートバイをご存じでしょうか。
大型バイクの代名詞ともいえるハーレーダビッドソンから技術提供を受け、
戦前から戦後まもなくにかけて国内で生産された、大型のオートバイです。
生産が終了してから年数も経過しているため、現存する台数も減少してきてはいますが、
昨今のオートバイブームの中で、まだまだ乗りつづけたい、という方も多いようです。
今回、お客様よりお預かりしたのは、「陸王」のシリンダーブロックでした。
現行のハーレーダビッドソンなどと同じく、V型の2気筒のエンジンです。
バルブを見ると、「RIKUO MOTOR CYCLE」と「MADE IN JAPAN」の刻印がはっきり見えます。
ぱっと見の外見だけではハーレーかな?とも思っていましたが、間違いなく「陸王」のエンジン
であるようです。
今回の依頼内容は、排気側のバルブの当たり面であるシート部分が摩耗しているうえ、
バルブのふちギリギリにかかる位置になってしまっているため、シートリングを入れ替えてほしい、
というものでした。
ただし、単純なシートリングの入替であれば手間はそれほどかからないのですが、
このエンジンは、元々シートリングが入っておらず、鋳鉄の本体そのものにシートリングの形状を
削り出してあるため、新たにシートリングを入れられるような加工が必要となってしまいました。
写真の上側が、シートリングを入れられるように本体を大きく削る加工を行った部分です。
加工されていない下の吸入側と見比べると、違いが分かりやすいかと思います。
続いて、削った形状に合わせたシートリングを製作します。
シートリング材を旋盤で加工し、圧入した様子です。
続いて、バルブの突き出し高さやシートの当たり位置などを調整しながら、
全体の形状を整えていきます。
バルブの当たりを点検し、バキュームテストなどで確認して、作業は完了となります。
古いエンジンや、海外製のエンジン、また小型のエンジンなどで、同様にシートリングが別の部品
として入っていない、というケースは、それほど珍しいことではありません。
こうした構造のエンジンでシートリングが摩耗している場合には、同様の加工を行うことによって
再生が可能となりますので、ぜひ一度ご相談ください。