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機械加工2025年7月8日

汚泥吸引車の真空ポンプ修理

汚泥吸引車という特殊車両をご存じでしょうか。

 

工場や建設現場などで発生する汚泥や汚水を回収するための車両で、弊社でも油水分離層の清掃や、

工場内のグレーチング溝の清掃などを行うために、定期的に専門業者に出動を依頼しています。

 

 

基本的な構造は、真空ポンプと呼ばれる装置を高速で回転させてタンク内の空気を排出し、タンク内を

減圧するというものです。

 

このとき外部との気圧差によって吸引力が発生し、汚泥や汚水がタンク内へと引き込まれます。

一般に「ポンプ」と聞くと、水や汚泥そのものを直接吸い上げる装置を想像されるかもしれません。

しかし、汚泥などをポンプ内に取り込んでしまうと負荷が大きく、故障しやすくなります。

そのため、真空ポンプ自体は空気のみを吸引し、その負圧で汚泥をタンクへ引き込む構造に

なっています。

 

ただし、構造上、タンク内の空気のみを完全に吸引することは難しく、

どうしても水分や微粒子(石灰・錆など)がポンプ内に混入してしまいます。

こうした異物が蓄積すると、ポンプ内部のサビや付着物の原因になります。

 

実際、ポンプ内部の部品同士の隙間はミリ単位であるため、ほんのわずかな

異物でも動作に支障をきたします。また、真空ポンプは非常に高速で回転するため、ベアリングや

シャフトなどの可動部は摩耗が進みやすい構造でもあります。

 

こうした条件が重なると、「ポンプがロックして動かなくなる」といったトラブルが発生するのです。

 

もちろん、破損時には新品のポンプに交換する選択肢もあります。

しかし、真空ポンプは非常に精密かつ大型の装置であるため、交換には高額な費用が発生します。

 

また、構造が複雑なため、メーカーであっても分解修理には対応していない場合もあります。

 

 

では、実際の修理作業の様子をご紹介します。

 

写真は、汚泥吸引車から取り外した真空ポンプ本体です。

各種配管や部品が複雑に取り付けられているため、作業員2名で半日がかりの作業となりました。

 

こちらは取り外した配管の一部です。

 

取り外した配管類の、ごく一部です。

 

 

片側のベアリングケースを取り外した様子です。

内部にさびなどの異物が大量に付着しているのがわかります。

 

 

取り外したシャフトです。

 

今回は海水を吸い上げて使用していたらしく、塩分を含んで腐食がひどい状態です。

 

このシャフトに曲がりなどが発生している場合、修正は基本的に不可能なので、シャフトごと、もしくはポンプ全体を交換する必要がありますが、今回は大丈夫そうです。

 

 

内部の漏れを防ぐシールのあたる部分も摩耗しているため、修理が必要です。

 

 

シャフトが収まっていたケースです。

当然、さびまみれです。

 

 

ケース内の磨き作業を行い、このように清掃します。

 

 

シャフトもブラストによる磨きや溶射による肉盛りなどによって再生しました。

 

 

あとは組み付けるだけ、なのですが、実はこれが一番難しい作業です。

 

2本のシャフトが絶妙な隙間を保ちながら回転し続けられるように、何度も隙間ゲージでの測定を

行う必要があります。

また、シャフト側やケースなどに異物が残っていたり、バリがあったりしてもスムーズに回りません。

何度も何度もポンプを回転させ、手作業での調整を行う必要があります。

 

最後に車両への設置を行い、作業は完了となります。

 

汚泥吸引車は、現場の衛生を維持する上で欠かせない存在です。

その心臓部とも言える真空ポンプが不調になると、業務全体が滞ることになります。

 

すべてのポンプが修理可能というわけではありませんが、まずは一度ご相談いただければと思います。